◎小児科診療日誌/かみいそこどもクリニック・渋谷 好孝先生(2006.8)

★ヘルパンギーナに注意を

 
咽頭結膜熱(プール熱)の激しい嵐が過ぎ去ったと思ったら、函館近郊ではヘルパンギーナという夏に流行するウイルス感染症がたくさん出てきました。このほかにも嘔吐(おうと)を伴って、水下痢になるというウイルス性胃腸炎も流行していて、暑くならない気温と合わせて、こどもたちにとっては楽しみの少ない夏休みになりそうです。
 ヘルパンギーナという病気は、コクサッキーウイルスなど数種類のウイルスによって引き起こされ、高熱と口の中に水泡から浅い潰瘍(かいよう)ができるのが特徴です。高熱は2―3日程度ですが、口の中のできものに痛みがあり、食欲が大きくそがれる原因になります。
 ウイルスが感染して病気が発症するまでには3日ほどの期間が必要です。感染は主に接触感染や飛まつ感染、ふん便感染などです。熱が下がっても口の痛みがなくなっても、こどもの体からウイルスが排出し続け、その期間はおよそ2―4週とも言われています。感染を防ぐという理由で登園を制限したり、友達との遊びを控えさせたりする必要はありませんが、集団生活の中ではウンチの取り扱いには気をつけてください。
 口の痛みはとても強く、ちいさなお子さんではよだれも飲み込めないほどです。特効薬はありません。冷たいものを食べると口の中の痛みが一時的に感じなくなるので、そのすきに食べさせるという方法がありますが、冷たいものを取りすぎて下痢になるのは注意しなければなりません。
 ヘルパンギーナの合併症はほとんどありませんが、まれに頭にウイルスが入って髄膜炎を起こしたり、心臓にウイルスが入って心筋炎を起こしたりすることがあります。口の中の痛みで、水分が取れなくて脱水症になることはしばしば経験します。夏場は、病気でなくても水分は大目に必要ですから、おしっこの回数など、体調に注意して脱水を起こさないようにしましょう。
 熱が下がり、口の痛みがなくなれば保育園や幼稚園に通うことは可能になります。

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