2010年8月20日 (金) 掲載

◎「自由の女神像」撤去 西部地区景観論争に一応の決着

 歴史的な景観が残る函館市西部地区の二十間坂上に設置されていた高さ約6メートルの「自由の女神像」が19日、撤去された。作業は市民や観光客約100人が見学する中で行われ、設置業者のマルキタ北村水産(北村暢一社長)元町店屋上の展望テラスに保管された。市が撤去勧告を通知するまでに至った2カ月半に及ぶ景観論争は、像の撤去という結末で一応の決着をみた。

 撤去作業は午後4時から開始され、作業員約10人とクレーン車1台で行った。土台のモルタルをはがして像を固定していたボルトを除去後、クレーン車で一気に約10メートルまでつり上げて、屋上テラスに置いた。像は横向きで保管され、上にはブルーシートが掛けられた。

 市は景観上の問題などから像の保管場所を市内の倉庫と希望していたが、12月以降は有料になるため、同社の屋上となったという。像の今後について北村社長は「これから店も繁忙期になるため、年内は屋上に置く」と話し、「景観を考え近くベニヤ板の屋根を設置して見えないようにする。像の今後は年明けに考える」と明らかにした。

 像は同社が元町店の敷地内に「二十間坂の女神像」として6月5日に設置。これを受け市は、「周囲の景観と調和していない」とする見解を固めて同30日に撤去指導を行った。7月14日には勧告を実施したが、同15日に北村社長が会見を開き、知人で歌手の佳山明生さんの説得などが理由として、8月20日までの撤去を表明していた。

 像をめぐっては宗教団体や市民団体などから、撤去を求める陳情・要望書7件が市に相次いで提出された。だが内容は像をめぐる景観問題だけではなく建物の外観などにも言及。北村社長は現状を説明するため、市を交えた団体側との3者で話し合いを望んだが、ほとんどの団体は応じていない。

 市の荒井俊明都市建設部長は「指導に従い撤去してくれてよかった。今後は両者の話し合いの場を設ける。また再発防止に向け、条例やガイドラインの見直しを進めていくと同時に、条例の周知も行っていく」と述べた。(山田孝人)


◎シロオビアゲハ 道内で初めて捕獲

 函館市内の小学生3人が18日、鹿児島県以南で生息するアゲハチョウ「シロオビアゲハ」を捕まえた。道南虫の会によると、シロオビアゲハの道内での捕獲記録は初めてで、同会は「関東以北でもほとんど例がない。画期的なこと」と話している。

 シロオビアゲハを捕まえたのは、いずれも函館駒場小3年の相原空良君(8)と東真央君(9)、常田拓君(9)。18日午後3時ごろ、市内広野町の自衛隊官舎前で、パタパタ飛んでいたのを東君と常田君が見つけ、相原君が網で捕まえた。

 その後、相原君の母親に見せ、「シロオビアゲハではないか」と思った母親が市立博物館の学芸員に連絡。学芸員の連絡を受けた同会の対馬誠事務局長が「シロオビアゲハ」と確認した。

 シロオビアゲハは、チョウ目・アゲハチョウ科に分類され、羽の色は黒く、後ろの羽に白い斑点が列をなして並んでいるのが特徴。日本では鹿児島県奄美大島以南に分布している。

 相原君らが捕まえたシロオビアゲハは前翅(ぜんし)長(前羽の長さ)約5aの雄。

 函館市内に飛来した推測として、対馬事務局長は@南方から函館に移入した植物などにサナギが付着し、羽化したA誰かが放蝶(ほうちょう)したB南方から風に乗り北上、津軽海峡を渡り函館に到着の3点を挙げた。「今の段階でどれが有力か分からないが、連絡を受けて見た時は信じられないと思った」と話す。

 3人は「捕まえた時、カラスアゲハだと思った」と振り返り、「(話を聞いて)すごいと思った。珍しいチョウとは思っていなかった」と驚いた様子。今後、3人で協力しながら飼育する考えで、「大事に育てたい」と話していた。(鈴木 潤)



◎企画「ACTION!北海道新幹線」/第2部・函館のいまC「観光」広域連携も着々

 新幹線工事のつち音が響く木古内町。町内を走るトンネル4本のうち、すでに渡島当別と幸連の2本が貫通した。「現在はトンネルが中心だが、(トンネル以外の)明かり部分の工事が本格化する2012年夏ごろには、住民も目に見える形で新幹線時代の到来を感じるはず」。順調に進む建設工事に、町まちづくり新幹線課の高谷郁郎課長は声を弾ませる。

 05年の「新函館―新青森」の認可、着工から6年目の今年、5月に町の駅前整備計画、6月末には道が主体となって行う駅前整備計画が相次いで決まり、新幹線開業後のまちの姿が徐々に見え始めてきた。このうち、開業に連動して道が行う駅前整備事業では、現駅舎の南側にロータリー型の駅前広場を設け、駅前通りの歩道を拡幅する。通りに面する家屋のほとんどが支障物件となるため、開業に伴って新たなメーンストリートが生まれることになる。

 人口5300人の小さなまちにとって、駅前通りの再生は町全体の活性化のカギを握る一大事業。「現在は閑散としているが、駅前を生まれ変わらせるチャンス」と、店を構える商店主らの駅前整備にかける期待は大きい。大森伊佐緒町長も「新幹線の乗降者が立ち寄りやすい、新しい形の駅前にすることが重要。駅で降りた人をどうつかまえるか、商売をする人たちのアイデアにかかっている」と民間の活力に期待を寄せている。

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 新幹線工事が進む中、観光客誘致に向けた動きも活発だ。キーワードは「広域連携」と「体験型観光」。5月に広域観光圏の形成を目指して渡島西部4町と桧山南部5町の枠組み「北海道新幹線木古内駅活用推進協議会」(会長・大森町長)が走り出した。「新幹線駅がある町の役割」とし、木古内町はコーディネーター役を担う。現在、9町の観光資源と食を生かした周遊ルートの作成を急いでいる。新幹線利用者に各地の魅力をアピールし、観光客の誘致につなげることが狙いだ。

 新駅の活用には渡島西部と桧山の観光の浮沈がかかっている。函館圏への一極集中を防ぐためにも、効果的なアピールは欠かせない要素となる。「新駅を核として、いかに観光客の大きな流れを生み出すか。5年はあっという間。今できることはすべてやる」(同課)と意気込みは強い。

 また、木古内町を含む渡島西部4町では、体験型観光の体制づくりを着々と進める中で、農漁業の1次産業を利用したメニューで修学旅行生の受け入れに力を注いでいる。今年、商工会など民間主体の組織「木古内まちづくり体験観光推進協議会」を発足させた。すでに3校が町を訪れ、9月も2校が修学旅行を予定している。同協議会の工藤嗣美事務局長は「自然や地引き網などのメニューは、学校関係者から高い評価を受けている」と手応えを語る。開業まで待ったなしの状態。官民一体となった観光客誘致の取り組みを進める中で、新幹線開業後のまちの姿を思い描いている。(松宮一郎) 【写真説明】5年後の新幹線開業でまちづくりの転換点を迎える木古内町。駅前整備と観光振興で町の活性化を図ろうと必死だ



◎町長と議会対立深刻化 森町

 【森】森町議会の議員定数削減をめぐり、佐藤克男町長と議会側が対立している。佐藤町長は、8月号の広報に議員定数と議員報酬について自身の考え方を掲載し、6月定例会で可決した削減幅と町長案のどちらかが妥当であるかを問う内容の町民アンケートを実施した。これに対し、議会側からアンケートへの公費支出や手法についての異論の声が上がり、緊急の議会報告会の開催準備を進めるなど、混迷の様相を呈している。

 町議会は昨年3月、議会改革特別委員会を設置して議論を重ね、今年4月7日の特別委で現行の22議席から6議席を削減する案を賛成多数で採択。6月定例会で条例改正案を可決した。議員報酬も昨年度同様に月額19万5000円から7・7%削減の同18万円に引き下げた。今後の報酬改定については、来年の改選期以降に継続協議とすることを決めている。

 一方、佐藤町長は4月5日に野村洋議長あてに、議員定数を12、報酬削減率20%とする内容の要請書を提出。広報8月号で、「要請に対する返事がない」として、町職員給与と議員報酬の削減幅のバランスや、議員定数の在り方についての見解を述べ、町民からの意見を聞くはがきを添付した。

 町には19日現在で、折り込みをしたはがき約7500枚の約21%に当たる約1600通の返信があるという。佐藤町長は「アンケートは、町民の民意を知るために町長の職務として実施した」と話す。

 議会側は「(定数削減などは)議会で議論して出した結論」として、条例改正の議決が、町長からの要請への返答であるとするスタンスを崩さない。公費を支出してのアンケート実施や広報の内容などについて、町長に対する反発が強まり、「議員有志の会」名義で町民に議員報告会への参加を呼び掛ける文書も配布されている。

 佐藤町長は23日に会見を開き、アンケート結果を公表する。野村議長らも同日、会見を開くとともに、25日午後6時半から町公民館で議会報告会を開き、町民に経過を報告する。(今井正一)


◎桧山6町 集中豪雨の農業被害 1億5717万円に

 【江差】11日夜からの集中豪雨に伴う農業被害は、奥尻町を除く桧山管内6町で1億5717万円(速報値)に上ることが19日までに、桧山振興局などのまとめで分かった。厚沢部町や江差町では、特産のメークインが広範囲で冠水被害を受けており、収穫への影響を懸念する声も上がっている。

 同局のまとめによると管内6町では約130fの農地が冠水。町別の農作物被害は、江差町3086万円、上ノ国町173万円、厚沢部町6920万円、乙部町575万円、今金町4779万円、せたな町182万円だった。中小河川のはんらんや農地の冠水被害が多発した厚沢部川流域の厚沢部・江差の2町で被害が広がった。

 厚沢部・江差の2町では、厚沢部川流域を中心に農地の冠水被害が多発。収穫期を目前に控えたメークインを中心に影響が懸念されている。農業関係者は「これまで経験がないような強い雨だった。畑の浸水時間が長かった」と話した。水は12日から14日までに引いたが、畑にたまった水が抜け切らず、土中でメークインの腐食が進む恐れがあるほか、掘り出したメークインが一部で流出する被害もあった。また、冠水被害を受けた露地栽培のカボチャなどへの被害も大きいという。

 桧山南部では16日以降、天候が回復しており、メークインの栽培農家は「畑の土が早く乾燥して被害が最小限に食い止められれば」と話し、天候の動向に神経をとがらせている。(松浦 純)